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アガベの天敵!アザミウマの駆除

アガベの天敵!アザミウマの駆除

アガベの代表的な害虫といえば、アザミウマ。スリップスとも呼ばれます。

室内管理の株にアザミウマの被害が出て、結局は生長点までダメージを受けて泣く泣く胴切りした経験があります。どうやら新規追加したアガベの芯にアザミウマが潜んでいたようです。

1株で済んだらよかったのですが、室内というスペースが限られた環境だったのでアザミウマが移動しやすかったのでしょう、数株被害を受けました。

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薬剤で対策していたつもりでしたが…。

室内室外関係なく、確実に薬剤を使用して防除することが重要だと思い知らされました。薬剤散布はしていたものの、甘かったのだと思います。

製薬会社に勤めていた経験をフル活用し、アザミウマと薬剤をリサーチ。そして、対策。被害は約2ヶ月ほどで食い止められました。新規展開する葉がきれいなことを確認して、一件落着です。

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自分は研究者してたので、顕微鏡検査に慣れていて見逃しませんでした。

うちでは確定ではないですが、今までで目視&ルーペ利用で2種類のアザミウマを確認しています。たぶんミナミキイロアザミウマとヒラズハナアザミウマです。

ミナミキイロアザミウマは室内で凝視してやっと見つけられる程度の大きさで成虫で1ミリないくらい。幼虫は動くチリみたいな感じで、目が悪いと見えないレベル。ルーペで動くのが見える。最大の特徴がキレイな黄色。

ヒラズハナアザミウマは1ミリちょっとくらいの大きさで、ミナミキイロアザミウマに比べると濃い茶色で、LEDライトで羽根か腹の部分がキラッと光る時がある。

目次

アザミウマにやられたらどんな感じ?

アガベ初心者だと株を見ても、アガベのトラブルがアザミウマによる吸汁なのか、葉焼けなのか、他の病気薬害なのか?判断に困ると思います。そこで、実際にアザミウマにやられてしまった自分のアガベを紹介します。参考になれば幸いです。

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初アザミ到来時は、アザミウマの被害だとすぐ分からなかったです。

アザミウマに食われた阿修羅

アザミウマの吸汁の傷跡のほかに、葉が黄色っぽくなって葉緑素が壊れてしまっています。吸汁された葉は、他の葉に比べ薄く貧弱です。葉が貧弱なので、鋸歯も弱々しくペラペラです。

アザミウマに食われた阿修羅
アザミウマに食われた阿修羅

自分のアガベ(重症)には、こんな感じの症状が出ました。

  • 重症の場合、吸汁跡がかさぶたの様になる。
  • 吸汁された部位周りが、葉緑素が抜けたようになる。
  • 葉が弱々しくなる。
  • 鋸歯も貧弱でペラペラ、色も悪い。
  • 成長点の成長が遅くなる。

アザミウマからアガベを守る方法

実際にアザミウマに食われて、それを克服した経験からすると単純ですが一番大事なポイントは3つです。1. 散布時期を守る2. 薬剤をローテーションする3. 効く薬剤を使う。これに尽きると思います。

  1. 薬剤散布時期を守る
  2. 薬剤はローテーションする
  3. 効果がある薬剤を使う

薬剤の散布時期を守る&工夫する

散布時期を守るというのは、室内だからと安心せず最低でも『1回/月』程度は必ず実施するということ。屋外だと最初からいろんな害虫に対して敏感かもしれませんが、屋内だと虫なんていないしという気持ちがアザミウマの被害を生み出してしまうことがあります。

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100%室内にアガベを置いているのに食われました。

薬剤散布の間隔に注意

また、気温(室温)によってアザミウマの生態サイクルの速さは変わるので、その点は注意が必要。アザミウマの生態サイクルが早い時期は薬剤散布の時期を早めることも重要。

例えばミナミキイロアザミウマの場合、卵から成虫になるまでの速度が以下のように違う。25℃:14~18 日、30℃: 12~13 日。

25℃30℃
ミナミキイロアザミウマ14~18 日12~13 日
ミカンキイロアザミウマ12.1日9.5日

薬剤によっては、幼虫時期または成虫時期しか効果がないものもある。気温によってアザミウマの生態サイクルが変化するので、夏場と冬場(気温・室温の変化に合わせて)で薬剤の散布間隔を変化させることがポイントになってくる。

月の満ち欠けにも注目

多くの生物は月の満ち欠けに伴い、孵化や産卵のタイミングを計っている。それは、孵化のタイミングを合わせることで、外敵に狙われる確率を下げることや、交尾の相手を効率よく見つけることに役立つ。

一般的に、満月と新月は孵化と交尾のタイミング。そのため、薬剤散布を満月や新月の3日後くらいに行うと効果的になる。なぜ当日ではなく少し後にするかというと、満月や新月の時に孵化した幼虫が出揃い駆除しやすいのと、交尾後に卵を産みに成虫がやってくる頃になるから。

同じ薬剤散布をするなら、最大限に自然の摂理を利用したタイミングで実施すると効果的。

正しく効果的に農薬を使う

薬剤のローテーションはとても大事。人間の抗生剤のように、単一で使い続けると段々と薬剤が効かない状態になってしまう。

アザミウマ対策の殺虫剤
(例)アザミウマ対策の殺虫剤

アザミウマにも種類があるので、種類に応じた効果のある薬剤を使わないと駆除できない。さらに、薬剤によっては、アザミウマの生態ステージで効果がある時期(卵には効かない等)が限定されているものも多いので、それらを考慮して使う。

  • アザミウマの種類に応じた薬剤を使う
  • ローテーションすることで薬剤への抵抗性を抑える
  • アザミウマの成長段階にあった薬剤の使い方をする

なぜここまで細かく考えるかというと、実際に被害が出ると理解できると思うのですが、アザミウマは見えない敵。そして、しつこい害虫だからです。大事にしている株を次々と、味見していくかのように新葉に吸汁の傷跡を残していきます。

生長点を奇形にされた日には…凹んで1週間くらい元気が出ませんでした。自戒の念も込めて記載しています。

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ホント、ごめんなさい。アザミウマが憎いです。

薬剤については専用の記事で詳しくご紹介しています。

新規導入時にアザミウマを持ち込まない

室内で育てているアガベについては、アザミウマがどこからか飛んできて住み着く可能性よりも、新規購入した株に付いてきたアザミウマが広がるリスクの方が高いです。実際に経験済みなので(汗)

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持ち込まないって重要です!

新規導入時に殺虫&殺菌処理する

購入したアガベにアザミウマが潜んでいることもあるので、新規株の導入時には薬剤で殺虫(殺菌も同時に)することがおすすめ。お店でしてくれていることもあるけれど、自身でもしっかり行うことがベスト。

新規導入した株は検疫ではないが、もしもスペース的に可能なら他の株とは離して様子を見る期間を設けると安心。芯に潜んでいるアザミウマの幼虫などには、なかなか薬剤が届きにくいので、新葉の展開を待って異常がないことを確かめるのも一つの方法。

信頼できるところから導入する

信頼できる海外ナーセリーと取引している方から株を買うのも大事になってくる。ナーセリーがしっかりと害虫管理していないと、アザミウマが中心部分に潜んだ状態で輸入されてしまう。

販売者の方もわざとアザミウマが潜んでいるような株を売っているわけではないのですが…。

取引先の海外ナーセリーをしっかり選んでいる信頼できるショップ(または、個人)からアガベを買う方がリスクヘッジになるかと。それに、万が一アザミウマにやられても相談すればアドバイスがもらえると思います。

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キレイな株が時限爆弾のようにアザミウマにやられました。

アザミウマが発生した!…実際やった対策

初めてのアザミウマの登場は、散々大切なアガベを食い散らかされてやっと気が付きました。

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阿修羅よりは軽傷ですが…ガッツリやられています。

アザミウマにやられたアガベ逆刺
アザミウマにやられたアガベ逆刺

初めてのアザミウマで、被害の経験がないから分からなかったんです。アガベの中心の芯の部分をよく見ないと、初期の被害は見落としてしまうと思います。それに、完全室でLEDでの育成なので、アザミウマのような害虫が入るという警戒心が低かった。

信頼できるお店の方に『ガッツリやられましたね…。それ、アザミ。』と言われて、確信に変わりました。そこからは、殺虫・駆除に全力です。

ちなみに、一緒に管理しているハオルチアはアザミウマにまったく食われませんでした。

ここから実際にやったことを記載しますが、あくまで自分の忘備録。もしも参考にされる場合は、自己責任でお願いします。薬剤の効果・副作用、株それぞれで出方が違う可能性があります。

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アガベも生き物なので、株の個性も千差万別です。

アザミウマを撲滅するためにやったこと

アザミウマの被害が発覚してからやったことは大きく二つに分けられる。①被害が未確認の残りの株すべてにすることと、①被害が出た株に行うこと。

被害が目に見えていないからといって、アザミウマが潜んでいない、卵を産み付けられていないとは言い切れない。むしろ、時間差で被害は広がっていくので、被害未確認株への処置は必須。

全株に実施したこと

  1. 殺虫剤の種類を追加
  2. 殺虫剤の散布間隔を短くする

殺虫剤の種類の充実はかなり重要。薬剤への抵抗性をつけさせないためにも重要だが、被害を出したアザミウマの種類の同定は難しいため効果のある薬剤をピックアップしにくい、よって薬剤の種類でカバーする。

いつもなら1~2回/月のところ、週1回ペースで薬剤散布。室内の温度が26℃であったので、アザミウマの成長ペースは約2週間で卵から成虫となる。これを考慮し、週1回ペースでの殺虫を実施。

被害があった株に実施したこと

  1. 薬液に水没させる(1回/2週間)
  2. 胴切り

被害が出た株は、薬液をバケツに入れたものに鉢ごと水没させた。噴霧では届きにくい中心の葉、さらにアザミウマが蛹(さなぎ)を作る土の中にも薬剤が行き渡るようにするのが目的。薬剤が入っているため、水没させる時間は長くても大きな体力のある株で5分程度。子株だと薬液に鉢全体をザブっと沈めてすぐ引き上げる。

(薬剤を入れずに水だけで15分程度沈める方法もあるそうですが、まだ試したことがありません。)

対処が遅れたアガベは成長点の奇形が見られ、1ヶ月ほど様子を見たが著しく成長速度が落ちたため泣く泣く胴切りを実施した。

胴切り&縦割りしたアガベ逆刺
胴切り&縦割りしたアガベ逆刺

約2ヶ月ほどで、新規に展開する葉からアザミウマの吸汁跡がなくなり、アザミウマの被害がなくなったので通常管理に戻しました。

アザミウマは世界中に存在する

アザミウマは日本だけなの?現地にはいないの?なんて考えたのですが、世界中にいることがわかりました。

しかも、日本にいるメジャーなミカンキイロアザミウマやミナミキイロアザミウマも、侵入害虫で元々は日本にいなかったのです。1980~1990年代に日本に入ってきて、日本全国に広がっていった感じです。園芸はもとより、野菜や果物の農家さん達を長く苦しめている存在です。

アガベの供給は現在輸入に頼っている状態で、販売店だけでなく、やる気さえあれば個人でもSNSなどを利用して海外のナーセリーから購入できます。そうやって購入したアガベはベアルートといって土を落として根がない状態で送られててきます。

植物防疫所で検疫チェックはされるものの、肉眼でとらえにくい虫でなおかつ中心付近に潜んでるとなると…防ぐのも難しくやはり入ってしまいます。これはアガベだけでなく、様々な植物の輸入でも同じことです。

そして、購入した人の植物棚まで海外からアザミウマは到達します。←こんな感じでウチにも侵入したわけです。

めちゃくちゃ小さいですが、目視でアザミウマの幼虫を確認しました。よく見ていると、少しずつ動いていました。たぶん、ミナミキイロアザミウマかと。

アザミウマの幼虫
阿修羅にいたアザミウマの幼虫
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アザミウマは日本だけでなく、世界中にいます。

ちなみに、日本では200種類ぐらいのアザミウマがいるそうです。その中でも24種類ほどのアザミウマが農作物に被害を及ぼす厄介者といわれています。

アザミウマは大きいものから小さいものまで色々いて、うちでは小型の2種類がを確認しています。室内だと小さいアザミウマの方が多いかもしれません。屋外の草なんか見ていると黒く大きいアザミウマもいます。

アザミウマとウイルス

アザミウマはアガベに汁を吸った傷跡を残したり奇形にするだけではない!ウイルスを媒介することもある。

アザミウマが媒介するトスポウイルス

アザミウマが媒介するのは、ブヤニウイルス科のトスポウイルス属で、総称として『トスポウイルス』と呼ばれている。一度感染すると完全に治療することはほぼ不可能、防除することが重要。

世界中に多くの種類のトスポウイルスが存在しており、様々な作物や植物で被害の報告がある。アザミウマはウイルスを伝搬する恐れがあることを知っておく。

アザミウマからウイルスは消えない

一度ウイルスに感染したアザミウマは生涯ウイルスを持ち続ける。感染しているアザミウマが植物の汁を吸うことで、次々とウイルスを拡散する。

アザミウマがウイルスに感染するのは、成長の初期段階(1~2齢幼虫)だけ。ウイルスに感染した植物に親アザミウマがウイルスに感染した植物に産卵し、孵化した幼虫がその植物の汁を吸うことで感染が成り立つ。

2齢幼虫以降に成長したアザミウマは、ウイルスに感染した植物を吸汁しても感染することはない。つまり、アザミウマの成虫が飛んできてウイルスに罹患した植物の汁を吸っても、ウイルスに感染することはない。ただし逆に、ウイルスを持っているアザミウマ成虫は正常な植物にウイルスを媒介する。

  • ウイルスを保持したアザミウマ→植物:感染する
  • ウイルスを保持した植物→アザミウマ成虫:感染しない

もしもトスポウイルスに感染したら…

症状としてはアガベではハッキリした文献は探せなかったのですが、キュウリやピーマン、シクラメンなどの植物ではトスポウイルスの被害が有名で、えそ斑点や黄化、灰白色の斑などの症状がでて次第には全体が枯れていく。

トポスウイルスに感染しているかどうかを正確に知るには、抗体検査をするしかないので一般的とは言えない。かもしれない?といった主観での判断になる。

実際にもしも、アガベがトポスウイルスに感染してしまったら廃棄するしか方法はない。ウイルスなのでベンレートなどの殺菌剤は効果がない。抗ウイルス薬はないので、かわいそうだけれど他の株に対しての感染源になりうるため廃棄することが一番の対策になる。

胴切りして子株を吹かせても、その子株もウイルスに感染しているのでどうしようもないです…。

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アザミウマの吸汁を防ぐことが重要です。

アザミウマについてのまとめ

アザミウマは世界中に分布していて、アガベの輸入株にも潜んでいることもあります。成長点の近くの葉の中に卵を産み付けられている場合もあり、なかなか防除が難しい害虫です。

薬剤の抵抗性も持っており、同じ殺虫剤ばかり使うと効果がなくなるので注意が必要です。薬剤散布をする場合は、複数の薬効成分が重複しない殺虫剤をローテーションで使用し、生き残る個体を作らないのが重要となります。

屋内でもアザミウマは入ってきて広がるので、薬剤の散布は定期的にちゃんとやった方が絶対いいです!アザミウマに食われて株の成長点がダメになってしまった時は、もう切り替えて胴切りで子株からリセットすることも有効です。根さえ元気なら子株は出ますよ。

参考・引用文献
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