アガベは丈夫な植物ですが、それでも現地と違って日本の多湿な環境や、輸送時のムレなどで病気になることがあります。アガベでは他の多肉植物と同じように、さび病や炭疽病、軟腐病あたりが病原性細菌が引き起こす病気となります。
適切な殺菌剤を使うことで、細菌感染が原因で起こる病気を予防できます。また、病原性細菌によって調子を崩した株の治療も行うことができます。根治は、なかなか難しいですが…。
購入した株がすでに病気を持っていることも…。
細かい話になると、細菌も種類がいろいろとあって、真菌類(一般的にカビと呼ばれる)が原因だったり、バクテリアが悪さをしているという場合もある。また、アガベにはウイルス性の病気もありますが、それらには殺菌剤は残念ですが効果ありません。
細菌感染したアガベの治療は難しいので、予防として系統が違う殺菌剤を使うことで、起こりうる病気を未然に防ぐことが健康な株を育てる基本になってきます。また、一番大事なのは、病気に負けない健康な株に育てることだと思います。それは環境因子の話になるので、また別のページで詳しく書きます。
治療というより予防として殺菌剤を使うのがGOOD!
ここでは、一応…、製薬会社の研究室で働いていた経験を活かし???(人と植物では全然違いますが…)実際にアガベで使っている殺菌剤について書いています。大事なアガベが病気になってしまったから、色々調べたり経験できたとも言えます。
主に自分の忘備録として記録しています。参考にされる場合は、自己責任でお願いいたします。経験に伴い、加筆修正を逐一行ってまいります。
- どんな薬剤も使い方を間違うと、薬害が出る恐れがあります。
- 適切な殺菌剤をローテーションで使用しましょう。
殺菌剤をグループで分けるFRACコード
殺虫剤と同じように、殺菌剤も薬剤の種類が重複しないようにローテーションで使用する必要がある。そのためには、国際団体CropLife Internationalが作った分類表(FRACコード)を使う。殺菌剤の有効成分でグループごとにFRACコードで分けてあるので、被らないように殺菌剤を準備しローテーションを組みます。
農薬工業会が国際団体CropLife Internationalの分類表を和訳しており、公開されているのでそれを利用するのが便利です。
RACコード(農薬の作用機構分類):JCPA農薬工業会
耐性菌を作らないために、遵守しましょう。
アガベに使用している殺菌剤
アガベの細菌による病気を防ぐためにも、定期的な殺菌剤の散布は有効です。自分の場合は100%室内で管理しているため、割と温湿度ともにコントロールしやすい環境ですが、それでも入念に殺菌処理しています。
アザミウマで痛い目を見たので、先手先手で対処しています。
ダコニール1000
- FRACコード:M5
- クロロニトリル
- 有効成分:TPN
- 糸状菌による幅広い病気の予防
- 治療効果なし
- 耐性菌の出現事例なし
アガベでは比較的よく使われている殺菌剤。園芸・野菜・果樹などで広く長く使われている。
糸状菌が原因で起こる炭疽病、斑点病など、葉に病状が現れる多くの病気の予防に効果がある。長く使われている殺菌剤だが、予防薬として使われていることもあり耐性菌の報告はみられない。
パウダータイプもあり、アガベの胴切り後の傷跡に塗布する使用方法もある。噴霧消毒として使うなら、フロアブルが便利。
治療効果はないので、病気の株に使っても意味がない。元気な株の病気予防に使用する。
アミスター20フロアブル
- FRACコード:11
- QoI剤(ストロビルリン系)
- 有効成分:アゾキシストロビン
- 浸透移行性、幅広い糸状菌に効果あり
- 予防・治療
- 耐性菌の発生リスクが高いので注意
アガベでは比較的多くの利用されている殺菌剤。
さび病、炭疽病、根腐れ病など、糸状菌*が原因で起こる病気の予防に使える。浸透移行性があるので、治療にも使うことができる。ただし、複数の耐性菌が報告されているため、他の殺菌剤とローテーションをしっかり行う必要がある。
*糸状菌は菌糸を伴う細菌。一般的には『カビ』と一括りで呼ばれている。
展着剤と同時使用で、キュウリやメロン、スイカなどで薬害を起こすことが知られている。アガベでも株の種類や育成状態、気温など条件次第では薬害が出る可能性があることに留意。
耐性菌の発生リスクが高いのでローテーション必須。展着剤は併用しない方が安全。
ベンレート水和剤
- FRACコード:1
- MBC殺菌剤
- 有効成分:ベノミル
- 浸透移行性、多くの病害に効果
- 予防・治療
- 古い殺菌剤で現在、多くの耐性菌が存在する
アガベでは比較的多く使われている殺菌剤。入手後に殺菌する時などに使われていることがよくある。
炭疽病、軟腐病、根腐れ病など糸状菌が原因で起こる幅広い病害に効果がある。予防や浸透移行性があるので治療にも使える。ただ、殺菌剤として古い薬剤なので、野菜や果樹などで長く使われている間に、多くの耐性菌も生まれている。
ホームセンターで入手しやすいトップジンとは同系統の殺菌剤なので、使用の際には連投にならないように注意。
便利な小分け入りと、大袋の両方がある。
ベンレートとトップジンは同じ系統なので、ローテーションの際には注意。
トップジンM
- FRACコード:1
- MBC殺菌剤
- 有効成分:チオファネートメチル
- 浸透移行性、速効性と残効性
- 予防・治療
- 古い殺菌剤で現在、多くの耐性菌が存在する
水和剤・ゾル・ゲルなど、様々な形状で販売されており、使いやすい入門的な殺菌剤。
ベンレートと同様の分類。炭疽病、軟腐病、根腐れ病など糸状菌が原因で起こる幅広い病害の、予防と治療に効果がある。ただ、殺菌剤としては古く多用されてきたため、耐性菌も多く報告がある。
使用する際には、ベンレートとのローテーションは避ける。耐性菌への対策のためにも、他系統の殺菌剤と確実にローテーションを組む。
トップジンとベンレートは同じ系統なので、ローテーションの際には注意。
STサプロール乳剤
- FRACコード:3
- MDI殺菌剤
- 有効成分:トリホリン
- 浸透移行性
- 予防・治療
バラの薬剤として有名だが、果樹・野菜・芝生などでも使える。さび病、うどん粉病などに効果がある殺菌剤。
浸透移行性があるので治療にも使えるが、防除としての方がより効果を発揮する。
さび病に感染していたアガベに使うため購入。確かに治療効果があるようで症状は治っている。
アガベで使っている殺菌 まとめ
アガベで使っている殺菌剤について書きました。
自分の忘備録です。参考にされる場合は、ご自身の自己責任でお願いします。
殺菌剤を正しく使うことで、糸状菌(いわゆるカビ)が原因で起こる病気を防ぐことができます。といっても、一番は病気にならない健康な株を育成すること。ただ、日本の多湿の環境ではちょっとしたきっかけで、炭疽病などカビに負けてしまうことがあります。
カビが原因で起こる病気は、完治がとても難しいです。殺菌剤で弱らせて、植物自体の生命力で病気を抑制しても、アガベが調子を崩すと再現することが多いです。
しっかりと育成環境を整えて、さらに殺菌剤を適切に使用し、調子を崩す前や怪しい感じがする場合に使用し、病気を予防することが重要だと思います。逆に言えば順調そのものの時は、殺菌剤を使う必要はあんまりないと感じています。
殺菌剤には浸透移行性があり治療で使えるもの、予防効果があるもの、など特性があります。病気になってしまったアガベに予防薬を使っても意味がありませんし、治療に向く浸透移行性の薬剤は植物内に薬剤が入る(=その分、副作用も考えられる)ということもチェックです。
副作用がない薬は、主作用もないので一概に副作用が『悪』という訳ではありません。
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